学ぶことが、もっと身近に。地方で働く歯科衛生士とつくりたい未来
2026年9月13日、三重県歯科衛生士会四日市支部 第1回支部研修会にて、講演の機会をいただきました。


今回のテーマは、
「歯科衛生士だからできること
~歯周治療と予防歯科から考える仕事の魅力~」
歯周治療や予防歯科を通して私自身が感じてきた、歯科衛生士という仕事の魅力ややりがい、そして学び続けることの大切さについてお話しさせていただきました。
当日は、多くの方にご参加いただき、会場には現役の歯科衛生士だけでなく、これから歯科衛生士を目指す学生さんの姿もありました。
皆さんがとても熱心に耳を傾けてくださり、講演後にはInstagramのDMで「刺さりました!」とメッセージをくださった方もいて、本当に嬉しい時間となりました。
そして、たくさんの方が集まってくださった会場を見ながら、私にはもう一つ、嬉しく感じていたことがありました。
それは、この光景が、私がずっとつくりたいと思ってきた未来に少しずつ近づいているように感じられたことです。
「学びたい」と思ったときに、学べる場所があること
私が歯科衛生士として学び始めた頃、セミナーに参加しようと思うと、県外へ足を運ぶことがほとんどでした。
もちろん、今でも県外へ出れば素晴らしい学びの機会がたくさんあります。
でも、私が暮らす三重県のような地方では、都市部と比べると、歯科衛生士を対象としたセミナーや勉強会が身近で開催される機会は決して多くありません。
学ぶためには県外へ行かなければならない。そうなれば、時間も交通費も必要になります。
何より、「ちょっと勉強してみようかな」と思ったときに、気軽に参加できる場所が身近にない。
その環境は、「学ぶ」という最初の一歩を少し大きなものにしてしまうのではないかと感じていました。
参加する人が少なければ、地方でセミナーが開催される機会も増えにくい。開催される機会が少なければ、セミナーに参加すること自体が身近なものになっていかない。そんな循環もあるのではないかと思っています。
だからこそ、学ぶことを、もっと身近なものにしたい。
そう思うようになりました。
だったら、自分たちで学べる場所をつくってみよう
「三重県の歯科衛生士と、もっと一緒に勉強したい」
「同じ地域で働く仲間と、一緒に切磋琢磨できる場所があったらいいな」
そんな想いから、歯科衛生士のための勉強会を立ち上げました。
何か大きなことを始めようと思っていたわけではありません。
ただ、セミナーや勉強会に参加することが特別なことではなく、「もっと知りたいから、ちょっと勉強しに行ってみよう」と思えるくらい、身近なものになったらいい。
そんな場所を、自分の住む地域につくりたいと思ったことが始まりでした。
ところが、勉強会を立ち上げて間もなく、コロナ禍がやってきました。
人が集まって学ぶことが難しくなり、思い描いていたような対面での勉強会は開催できなくなりました。
それでも、学ぶ場所をなくしたくない。そう思い、しばらくはZoomを使って勉強会を続けました。
形は変わっても、「歯科衛生士が一緒に学べる場所をつくりたい」という気持ちは変わりませんでした。
学ぶ場所をつくること、歯科衛生士を育てること
勉強会の活動を続ける一方で、2023年、私はフリーランス歯科衛生士として独立しました。
現在は臨床に携わりながら、歯科医院での院内研修や臨床サポートを通して、歯科衛生士の育成にも携わっています。
勉強会をつくることと、医院の中で歯科衛生士を育成すること。
形は違いますが、「学ぶことで、歯科衛生士としてできることが増えていく」ということを大切にしている点では、私の中でつながっています。
私自身も、学ぶことでできることが増え、歯科衛生士という仕事がどんどん面白くなっていきました。
だからこそ、学びたいと思った人が、その一歩を踏み出しやすい環境をつくっていきたいと思っています。
学生のうちから、「学ぶこと」を身近に
そして、もう一つ大切にしていることがあります。
それは、「歯科衛生士になった時点で、セミナーを受講することへのハードルをできるだけ下げておきたい」ということです。
その想いから、現在は歯科衛生士を目指す学生さんを対象とした無料セミナーも行っています。
学生のうちから、学校の授業とはまた違う「学びの場」があることを知ってほしい。
そして、「歯科衛生士になってからも学び続ける」ということを、特別なことではなく自然なこととして感じてほしい。
臨床に出て、「もっと知りたい」「もっとできるようになりたい」と思ったときに、セミナーや勉強会へ参加することが、ごく自然な選択肢の一つになっていてほしいと思っています。
だから今回の研修会に、歯科衛生士を目指す学生さんたちが参加してくれたことは、私にとって本当に嬉しいことでした。
学生のうちからこうした場へ足を運び、現役の歯科衛生士と同じ空間で学ぶ。その経験が、いつか歯科衛生士になったときに「また学びに行ってみよう」と思えるきっかけの一つになってくれたら嬉しく思います。
学生だった方と、今度は歯科衛生士として再会
そして今回、学生さんが参加してくれたこととは別に、もう一つ嬉しい出来事がありました。
以前、歯科衛生士学校で私の講義を受けてくれた方が、卒業して歯科衛生士となり、今回の研修会に参加してくれていたのです。
学生だった方と、今度は同じ歯科衛生士として「学びの場」で再会できたこと。これは私にとって、本当に嬉しい出来事でした。
私が学生さんたちに伝えたいと思ってきたことが、その方の中にどれだけ残っているのかは分かりません。
それでも、学生だった人が歯科衛生士になり、その先でも学び続けるためにこうした場へ足を運んでくれた。
その姿を見られたことに、これまで続けてきたことが少しずつつながっているような気がしました。
「三重県、いいなぁ」と言ってもらえたこと
実は、今回の研修会が始まる前にも、心に残っている出来事がありました。
今回の研修会は、三重県内の歯科衛生士を対象に無料で開催された研修会でした。
Instagramで研修会のお知らせをしたところ、県外の歯科衛生士の方から、「県外からでも参加できますか?」とお問い合わせをいただきました。
今回は三重県内の歯科衛生士が対象であることをお伝えすると、その方から返ってきたのが、「三重県、いいなぁ」という言葉でした。
その一言が、私はとても嬉しかったのです。
ずっと私は、自分の住む地域で、歯科衛生士が学ぶことをもっと身近にしたいと思ってきました。
そんな三重県の学びの機会を見て、県外で働く歯科衛生士の方が「いいなぁ」と思ってくれた。
ほんの小さな出来事かもしれません。
でも私には、ずっと思い描いてきた未来が、少しだけ始まったように感じられた瞬間でした。
地方で働いていても、学ぶことがもっと身近にある未来へ
私が三重県で勉強会を始めた原点には、同じ地域で働く歯科衛生士と、もっと一緒に学びたいという想いがありました。
その気持ちは今も変わりません。
もちろん、学びを通して出会った県外の歯科衛生士の皆さんとのつながりも、私にとって大切なものです。
地域に関係なく、学ぶことを楽しみ、患者さんのために成長しようとする皆さんと一緒に学び、刺激をもらいながら、私自身も成長していきたい。
そのうえで、自分が暮らす三重県にも、学ぶことがもっと身近にある文化をつくっていきたい。
いつか、「三重県って、学ぶことに熱心な歯科衛生士さんが多いですよね」そんなふうに言ってもらえる地域になったら、とても嬉しく思います。
それは、誰か一人がものすごい知識や技術を持つということではありません。
「分からないから勉強してみよう」
「もっと患者さんの役に立てるようになりたい」
「もう少し上手になりたい」
そんな気持ちを持ったときに、気軽に学べる場所があること。
そして、学ぶことを楽しむ歯科衛生士が身近にいること。
お互いに刺激を受けながら、それぞれの場所で少しずつ成長していくこと。
そんな文化が地域の中に根付いていったらいいなと思っています。
これはきっと、三重県だけの話ではありません。
地方で働く歯科衛生士の中には、「学びたいけれど、近くに学べる場所がない」と感じている方が、まだたくさんいるのではないかと思います。
だから私は、自分の住む地域から。
できることは小さくても、学ぶことをもっと身近にするための場所を、これからもつくり続けていきたいと思っています。
次回は「歯周治療と歯科衛生士」を、さらに深く

ありがたいことに、次回の登壇も決まっています。
2027年1月31日。
今回の講演では予防歯科のお話を中心に、歯科衛生士という仕事の魅力についてお伝えしました。
次回は、もう一つの私の大切な専門分野である歯周治療について、より深くお話しする予定です。
歯周基本治療において、歯科衛生士には何ができるのか。
患者さんを治癒へ導くために、どのような知識を持ち、何を考え、どう関わっていくのか。
そして、日本歯周病学会認定歯科衛生士という資格についても、お話しさせていただく予定です。
私自身も、一人の歯科衛生士としてまだまだ学び続けています。
だからこそ、教える人と教わる人という一方向の関係だけではなく、同じ歯科衛生士として、一緒に学び、一緒に成長していけたら。
今回の研修会を終えて、その想いがまた一つ強くなりました。
ご参加くださった皆さま、そしてこのような機会をくださった三重県歯科衛生士会四日市支部の皆さま、本当にありがとうございました。
これからも、自分の住む地域から。
学ぶことが、もっと身近にある未来を。
少しずつ、皆さんと一緒につくっていけたらと思います。

